蝶々夫人 Madama Butterfly

蝶々夫人 Madama Butterfly

今年の1月はプッチーニのオペラ「蝶々夫人」で女中のスズキを歌った。メゾソプラノで日本人である私にとり、スズキは外せない、大切な役だ。自分の容姿が有利になる役など他にはない。歌の勉強を始めて間もない頃から「あなたスズキ歌えば良いじゃない」、「君はスズキに必要な要素をすべて持っとる」と言われ続け、今回ようやく歌う機会に恵まれて、少しほっとした。余談だが、こちらの人はスズキと素直に言わずになぜか「ツッズーキ」とリキんで発音するため、慣れるまで何を言われているのか分からなかった。

「蝶々夫人」はその素晴らしい音楽にもかかわらず、日本の文化や女性に対する偏った描写から、好まれないことも多い。私も好きではなかった。だが、いったん勉強し始めると、日本人ならではのこのオペラの楽しみ方があることに気がついた。

オペラ好きには周知のことかもしれないが、「蝶々夫人」には、「さくらさくら」「君が代」、「越後獅子」、「お江戸日本橋」といった日本の馴染み深い旋律が所々に散りばめられており、この場面はどのメロディー、と探し当てるのが非常に楽しい。例えば、「お江戸日本橋」は蝶々さんの結婚式の場面というように、ストーリーと旋律がまったくかみ合っておらず、ずっこけてしまうのもまた楽しい。

私は東京の深川という下町に育ち、大叔母(祖母の姉)は新内の家元だったため、幼い頃おばさんの三味線に合わせて「お江戸日本橋」の稽古をした記憶がある。この歌は新内ではないが、ちょっと軽く楽しく歌ったのを憶えている。数十年後、ニューヨークでその曲に再会することになろうとは。それもオペラの世界で。何という運命のいたずらか!(続く

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