セビリアの理髪師 – Il barbiere di Siviglia

セビリアの理髪師 – Il barbiere di Siviglia

2014年の終わりには、ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」で女中のベルタを歌った。翌月に「蝶々夫人」でスズキを歌うことになっており、女中役が続くが、「ベルタはおいしいよ」「もうけ役だよ」とも言われていたので、挑戦してみることにした。

ベルタはメゾソプラノと書かれていることもあるが、私にはソプラノ役としか思えず、アリアはA、コーラスではCまで上がり、かなり音域が高かった。メゾでもCやDまで出すことは頻繁にあるものの、高音でホールドせず、シュッと上がってはサッと自分の陣地まで下がる感じで、少々違いがある。逆に、メゾ役のロジーナをソプラノが歌うこともあり、その場合、アリアはソプラノ版を使い、コーラスはロジーナがソプラノ、ベルタがメゾと、入れ替えて歌うことになる。

「セビリアの理髪師」は、あまりにも有名な前奏曲に、これまた有名なフィガロのアリア”Largo al factotum”(「町の何でも屋に」)、さらにロジーナの”Una voce poo fa”(「今の歌声は」)と、オペラに馴染みがない人にも聞き覚えのあるメロディーが目白押しで(聞けば分かります)、娯楽的要素が非常に高い。また、ストーリーは極めて軽く、ペラッペラに薄いため、このオペラを観劇する際には、事前にあらすじをよく読み、「笑いどころ」を押さえておくのが賢明かもしれない。オペラも歌舞伎や落語と同じで笑う箇所が決まっており、本当に可笑しいかどうかに関係なく、「ほっほっ」と小さく笑うのが通のたしなみのようだ。

バルトロ邸の召使、ベルタは風邪をひいているのか、やたらとくしゃみをする。一方、同じく召使のアンブロージョはあくびばかりしており、この召使コンビがくしゃみとあくびの掛け合いをする。アメリカのコメディ、「三ばか大将」とか、落語の間とか、そういうセンスが求められる。くしゃみやあくびには旋律がないため、音楽に合わせてタイミング良くくしゃみをするのは大変難しかった。このあくびとくしゃみの場面は省略されることが多いそうで、残念だ。(後記:このくしゃみとあくびはフィガロの仕業によるものらしい。)

ベルタは酸いも甘いもかみ分けたおばさんだが、滑稽な中にも孤独やしんみり感を垣間見せるところもあり、そこが「儲け役」と言われる所以だろうか。

物語としては、「セビリアの理髪師」の続編がモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」となる。登場人物が重複しているため、あれ?と思った向きもあるだろう。アルマヴィーヴァ伯爵にいろいろと入れ知恵をする理髪師(何でも屋)フィガロが後に結婚する話が「フィガロの結婚」である。周知のこととは思うけれど。オペラを語る上で、どちらも決して外せない作品だ。

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