先月末に仕事が一段落して以来、家の片づけに熱中している。物が減り、アパートが本来のスペースを取り戻すにつれ、小物たちの居場所も変わっていく。本棚を守っていたカバがテレビ台に移り、窓際でくつろいでいた牛やヤギたちが撤退した。
作業を進めるうちに、ある置き物が私の注意を引き始めた。
それは、昨年末にブライアントパークの出店で買った布袋様のような風体の小さな石の像で、良いんだか何だか、好きなのかどうなのかもよく分からずに持っていたものだ。姿かたちは悪くないのだが、背後に後光のような国籍不明のひらひらが付いている。布袋様に後光はないのでは?そして、ぽっちゃりした体の割に厚みがなく、ペラッペラに薄い。何か中途半端だ。
私の寝室には、天使とネパール製の小さなお釈迦様を飾った、ちょっとした神聖なスポットがある。はじめ布袋様もそこに置いてみたのだが、何故かまったくしっくりこない。周囲から浮いているというか、違和感が強い。何となく、お釈迦様が嫌がっているような気がしたので、このフュージョンの布袋様はリビングルームに移すことにした。心なしか嬉しそうだ。お釈迦様たちも、元の静謐な世界が戻ってほっとしたように見えた。
取り敢えず本棚に無造作に置いていたが、コーヒーテーブルに移し、窓際に移し、としているうちに、布袋様は暖炉の上の小高いスポットにしっくり収まった。小さな置き物にとり、我が家で最高の場所ではないだろうか。特に気に入って、大切に飾ろうとしたのではない。正直言って処分しようとさえ思っていたのに、今やそれは出来ない威厳を放っている。特別な才能があるわけではなく、強い個性が時に不調和を生みながらも、場所を変え、時流に乗り、すいすい出世していった感がある。人の運について考える。
以来、リビングルームの雰囲気が明るく、やわらかくなった気がする。布袋様のおかげだろうか。